| ビデオの圧縮この項では、ビデオ圧縮について解説します。ビデオ圧縮は、DTVならではの考え方であり、圧縮を理解することがひとつの大きなポイントですので、じっくり説明して参ります。ビデオ圧縮の必要性前項[ ■ ]では、TVの表示は、1秒間に30枚の速度で「紙芝居」をめくってゆくやりかたであることを説明しました。また、たとえば、HDビデオの場合、1枚の紙=フレームは、1920×1080ピクセルで構成されていることも説明しました。 さて、1920×1080の静止画の容量は、いくらでしょう。各ピクセルごとに、3色, 各256階調(8 bit)で色表現するとして、1フレーム当たり
              6.2MBです。 デジカメ画像ファイルと比較しても、たいしたことないじゃない、と思われるかもしれません。でも、これが1秒に30フレーム必要だとすると、1秒で187MB、1分で11.2GB(DVD
                3枚弱)、1時間で672GB(ちょっとしたHDD 1台分)になってしまいます。これは、ほんとうに大変なデータ量です。 我々が、DTVを楽しむときに、HDDがすぐに埋まってしまって大変だ!!、なんてレベルではなく、TV局やビデオスタジオで扱う尺(作品の長さ)を考えてみればわかります。あるいは、デジタル放送では、187MB/s=1.5Gbpsの帯域が必要になってしまい、有線のGigabit
                Etherでも足りません。あるいは、HDビデオの映画作品を販売するときには、1.5TBのHDDに収録しなくてはならなくなります。 B/s : Byte per second。1秒当たりのバイト数。HDDやディスクメディアの転送速度で、こういう表記がなされます。 bps : bit per second。1秒当たりのビット数。主に、通信分野で使われる単位です。 1バイト=8ビットなので、1 B/s= 8bpsで換算されます。 そんなことを考えると、何らかの方法で「データ量を減らしてやる」必要があります。この処理が「圧縮」です。 Codecたとえば、おなじみのDVD-Video、容量4.7GB(1層式の場合)に、2時間近くのSDビデオを収録しています。2時間のSDビデオは、圧縮なしだと7.5GBになりますが、これを1枚のDVDメディアに納めるために、MPEG2という方式で「圧縮」されて収録されています。そして、DVDプレーヤ上で、圧縮されたビデオは、MPEG方式で「伸張」されて元のビデオに復元され、TVに表示されます。 デジタル放送も同様です。放送波のデータ帯域(転送データ量)を削減するために、TV局からはMPEG2圧縮されたデータが送信されます。それを、家庭で受信されたのちに伸張されHDTVでの表示がなされるのです。 これらの例で登場したMPEG2のように、「圧縮」・「伸張」を行う仕組み(圧縮伸張アルゴリズム)のことを、Codec(コーデック)といいます。Compression・Decompression(圧縮・伸長)の略です。 これらはビデオ(動画)だけに当てはまるのではありません。デジカメの静止画でも、JPEGファイルだとファイル容量が少なくてすみますよね。これは、JPEGという仕組みで「圧縮」しているからです。 Codecの例iMovieでDTVする際に、お世話になるCodecを思いつくまま。 ビデオカメラAVCHDビデオカメラAVCHDビデオカメラで撮影されたビデオは、MPEG-4 AVC/H.264というCodecで圧縮されています。フレームサイズは、HD
                1920×1080、HD 1440×1080のほか、SDビデオサイズも可能です。 HDVカメラHDVカメラで撮影されたビデオは、MPEG-2というCodecで圧縮されてテープ上に記録されます。フレームサイズは、HD
                1440×1080のみです。 DVカメラDVカメラで撮影されたビデオは、DVというCodecで圧縮されてテープ上に記録されます。フレームサイズは、720×480です。 SD MPEGビデオカメラSDビデオカメラの中で、DVテープ以外に収録するもの、たとえば、HDDに収録したり8cm DVDに収録するビデオカメラでは、ビデオはMPEG2というCodecで圧縮されてテープ上に記録されます。フレームサイズは、720×480です。 iMovieでの編集時のCodeciMovieでは、 HDビデオは、AVCHDビデオカメラのビデオであろうとHDVカメラであろうと、iMovieへの取り込みの際に、すべてApple
                Intermediate Codecに変換されます。iMovieでの編集時もApple Intermediate Codecが使われます。 SDビデオは、DVカメラであろうとSD MPEGビデオカメラであろうと、iMovieへの取り込みの際に、すべてDV Codecに変換されます。iMovieでの編集時もDVが使われます。 iMovieで編集した作品を、各種用途向けに書き出す際のCodecDVD-VideoiMovieからiDVDに持ち込んで、DVD-Videoを作成する場合。DVD-Videoは、SDビデオを収録するための規格ですが、このビデオデータは、MPEG2で圧縮されています。ここのMPEG圧縮処理は、iDVDによってなされます。 Blu-ray Disc VideoiMovieで編集が完了したHDビデオ作品を、Toast, Encore CS, Final Cut Pro 7に持ち込めば、Blu-ray
              Disc Video(BD-Video)を作成できます。BD-Videoは、主にHDビデオを収録するための規格*) ですが、このビデオデータは、MPEG2かMPEG-4
              AVC/H.264のどちらかで圧縮されます。 *) BD-Videoは、主にHDビデオを収録するための規格ですが、SDビデオも収録することもできます。DVD-Video並の画質だと、1枚に十時間以上のSDビデオが収録できます。 圧縮の功罪圧縮の「功」、すなわちメリットは、いうまでもなく、データ量を削減できることです。転送レートを下げることができますし、ファイル容量も小さくできます。 一方、圧縮には「功」だけではなく「罪」、つまりデメリットもあります。 ひとつは、画質劣化を伴うこと。もうひとつは、圧縮・伸張のためにMac(やPC)に高性能を要求することです。 圧縮に伴う画質劣化一度圧縮してそれを伸張して表示した画質と、圧縮前のオリジナルの画質を比較すると、たいていのCodecでは、程度の差はあれ画質は劣化します*)。画質劣化を伴う圧縮を「不可逆圧縮」といいますが、コンシューマ用途で用いられるCodecはすべて不可逆圧縮を行います。 *) たいていのCodecでは、...画質は劣化します。 圧縮すると、必ず画質劣化を招くわけではありません。画質劣化がゼロのCodecもあります。これらは、可逆圧縮やロスレス圧縮といいます。ロスレス圧縮での圧縮率は、せいぜい2倍(オリジナルの半分の容量)がいいところ。ですので、使用されるのはハイエンドビデオ編集のときだけです。ハイエンドDTVでは、圧縮自体を行わないSD非圧縮編集も行われています。 ビデオカメラやデジタル放送などコンシューマ用途では、2倍の圧縮程度では全く足りませんので、ロスレス圧縮は使われません。 同じCodecを使用するとき、圧縮率を高くすれば、当然ファイル容量は少なくなりますが、一方で、画質が悪くなります。圧縮率と画質は、トレードオフ(反比例)の関係にあるのです。 高性能なCodecほど、高性能なMacが必要また、より高性能な別のCodecで圧縮するとき、たとえば、MPEGとMPEG-4
              AVC/H.264とを比べたとき、MPEG-4
              AVC/H.264の方が高性能なので、同じ圧縮率であれば、MPEGよりもMPEG-4
              AVC/H.264の時の方が高画質です。また、同等画質を狙うならば、MPEG-4
              AVC/H.264がmPEG-2よりも圧縮率を稼ぐ(=できあがったファイル容量を小さくする)ことができます。こんな高性能な
MPEG-4
              AVC/H.264ですが、一方で、圧縮・伸張するためには、高性能なMac(やPC)が必要です。たとえば、MPEG-4
              AVC/H.264を使用しているAVCHDビデオカメラから取り込むには、Power PC Macでは非対応で、Intel Macが必要な理由もここにあります。
 編集の際に、Codecに関して注意すべき点...といった見出しの記事を用意したのですが...。 実のところ、iMovieやFinal Cut Expressで編集する限りでは、SDビデオはDV Codecで、HDビデオApple
          Intermediate Codecで、と決まっていて、設定を変更しようがないので、編集時Codecに関して、編集時に気をつける点自体がありません。というか、これらソフトの位置づけが「Codecになんか気配りしなくても大丈夫ですよ」という設計思想なので、詳細設定がないのも当然といえば当然ではあります。 Final Cut Proの場合は、ワークフロー全体を考慮して、自分に最適なCodecを利用するのがキモだったりするのですが...。 ご参考)圧縮で画質劣化するというけれど圧縮には「功」も「罪」もあり、最大の「罪」は画質が劣化することなのですが、さて、その劣化の程度は、「実用上」問題になるのでしょうか。 「画質劣化が(少しでも)あるからダメ」という論調を見かけます。でも、本当にダメなのか、つまり、「劣化の程度が「実用上」問題になる、だからダメなのか」、ここをよく考えたいものです。 こういった論調は、DTVの黎明期からありました。「DTVでは、圧縮するという。圧縮すると画質が劣化する。だから、DTVはダメ(使えない)」という論調は、それこそアナログビデオのプロからも聞こえてきていたのです。でも、ちょっと短絡的すぎるなあ,to 。「このDTVシステムで圧縮して作ったビデオは、私の用途では実用上使えない。画質が足りないとか、処理時間が長すぎるとか、コスト的にあわないとか。だからこのシステムは私の用途ではダメ」という論調だったら、ごもっともだったのですが。 私としては、まあ、確かに、iMovieでもFinal Cut Expressでも、もちろんFinal Cut Proであっても、圧縮すれば画質は劣化しているのだろう、だけど、容認できる程度だ、と考えています。あるいは、圧縮率も高く、高画質で、しかもMacの性能がさほどなくてもいい、なんて無い物ねだりしても、無いものはないのですから。iMovieで、HDビデオを編集できるなんて、それもこんなに手軽に編集できるなんて、それだけですばらしいことだと思うのです。   |