2007.03.08 欲しくないAV/PC両用液晶モニタ/Eizo S2411W 定点ドット欠け

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[ 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ ]ネタ番外編です。

ナナオ社(Eizo)のFlexScan S2411Wは、DVI(HDCP)がインターレースを受け付けない、という理由で、候補から外してしまったあとは、すっかり興味の対象から外れてしまったのですが、最近、違う意味で注目しています。

いわゆる「S2411Wの定点ドット欠け問題」。
こちらを参照頂くとわかりやすいでしょう。これを読むと、もう、なにをかいわんや、ですよね。

一般的に言って、液晶のドット欠けは、今の技術では確かに避けられないことなのでしょう。ひとつでもドット欠けがあるパネルを欠陥品とし出荷しないとなると、歩留まりが悪くなる分コストアップしてしまいます。
だから、消費者側が「ドット欠けゼロの物だけを出荷しろ」と一方的にいうのも、広い目で見れば経済合理性を欠くことになってしまいます。

単純化すると、
「製造数量の半分がドット欠けゼロ、もう半分の数量が少なくともひとつはドット欠けあり」の場合、ドット欠けゼロしか出荷しない(残りは廃棄)すると、価格は2倍になってしまいます。消費者としても、それでいいのかなあ。
といったこと。つまり、メーカにも言い分はある、と。

で、ここまでで言っている「ドット欠け」とは、高度な製造技術を持ってしても避け得ないもので、「確率的に発生する」ドットかけのこと。「確率的に発生する」というのは、

・どのロットでも、ほぼ同じ確率で発生する(ロット間差がない)。

裏を返すと、あるロット「だけ」で発生確率が高い場合、「そのロット」(の製造・原材料...)に問題がある、と考えなくてはならない。

・あるロットの中の、複数のパネル間を比較すると、ドット欠け箇所はランダムなはず(ロット内差がない)。
の双方を満たす場合のことです。

ここまでは、一般論。

で、改めて、S2411W定点ドット欠けの件を見ますと、
複数のパネルで、同一箇所で同じ青常時点灯症状が出るのでは、「確率的に発生」しているとは言えません。「避けられない」ドット欠けではなく、例えば、設計・製造ラインの改良等によって「避けうる」ドット欠けです。
あるロットだけに有意に多く発生していたら、該当するロットすべてを出荷停止(ロット落ち)とすべきですし、複数のロットにまたがって発生するようなら、根本的に製造工程・設計を見直すべきです、生産を続けている場合じゃない。

...というのが、工業製品におけるQC(Quality Control、品質管理)の基本です。ですから、これを出荷するということ自体、信じがたい事態なんですね。

今回のS2411W定点ドット欠け問題について、「一部の神経質な消費者が騒いでいる」という見方もありますが、そうではなく、品質管理の根本思想に関わる話しであることはおわかり頂けたと思います。
 

で、ですね。
今回のS2411W定点ドット欠け問題については、Eizoには、次の2点において問題があると思うのです。

(1) 工業製品におけるQuality Controlの基本を理解してないのでは?と疑念を抱かせること

ドット欠けの原因は、本来的には液晶パネルメーカにあります。Eizoは、部品を買って組み立てているだけですから。だから、ほんとは「この液晶パネルメーカは、定点ドット欠けパネルを、よくも(正常な製品として)出荷できるもんだな」という話しのはず。
ただし、Eizoも、定点ドット欠けパネルを受け入れ試験をし、組み立てた後にも出荷試験をしているわけで、この際によく出荷できたもんだ、と。

(本来なら、Eizoが受け入れ試験をした時点で、定点ドット欠けパネルはメーカに送り返す、という措置が普通のビジネスのはず)。

そういう意味で、EizoはほんとにQCをわかっているのだろうか、Eizoがいう品質管理とは一体何?と消費者に疑いを抱かれてしまうのも当然なんです。
  

(2) リスクマネージメント、リスクコミュニケーションに失敗していること

こういう事件が起こったあとの対処のしかた(ユーザ問い合わせに対する態度・その際のポリシー...)を見ても、問題がありありです。

一つ目。
世の中、欠陥ゼロ、リスクゼロというものはありえず、少なからずリスクや欠陥・トラブルは起こります。消費者は一方的に「ドット欠けゼロの物だけを出荷しろ」といいますが、前述のように、広い目で見れば経済合理性を欠いています。
といったことを、丁寧に効果的に説明・説得・広報して、社会的な合意を得ることをリスク・コミュニケーションといいます。今回のEizoの態度は、このリスク・コミュニケーションを完全に放棄しています。というか、全く逆をやって感情をさかなでしまってますね。

二つ目。
この問題はEizoブランドの危機と捉えるべきです。Eizoは、ハイエンド(高価格だけれど高品質)のイメージで商売してきたわけですが、Eizoのいう「品質」とは?という点について消費者が疑念を抱いているのですから。

Eizoのブランド価値は高く、私も、Eizoブランドの信者(ただし症状は軽い)です。高価だけれど高品質というブランドイメージはハイエンド機での評判が産んでいるのでしょうが、ハイエンド機は数がはけるはずもなく、ほんとは「コンシューマ」機の売り上げで商売は成り立っているはずです。Eizoのコンシューマ機は、他社同クラス製品よりも「ちょっとだけ高価」だけれど、ブランドイメージ(高価だけれど高品質)に惹かれた消費者が買ってくれているわけ。

実際、わたしもCRT(T561)、LCD(L565)とEizo製品を乗り継いできました。

今回のEizoブランドの危機は、おそらく、ナナオ社全体にも響くくらい、大きな出来事のはずです。
そんな意味で、企業が信用を失う典型的なケースともいえそうです。

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