2001.12.13 ウイルス・ウイルス

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いまだ猛威を振るう、BadTrans.B。Mac. una Matataでも何度かお伝えしております。

ところで、日経BizTechのこの記事 で、ウイルス対策ソフトベンダーSophos社CEOJan Hruska氏が、今後はどのようなコンピュータ・ウイルスが登場してくると考えているか。という記者の質問に
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コンピュータ・ウイルスは、現実の病気のウイルスとよく似ている。エボラウイルスのように1日で死に至るような致死率が高いウイルスはあまり流行しない。流行するのは、カゼのウイルスのような致命的ではないものだ。
 コンピュータ・ウイルスもそれと同じで、致命的なものはそう広がらないだろう。つまり、今後流行するコンピュータ・ウイルスは、BIOSの入ったフラッシュ・ロムまで破壊してしまうような「CIH(チェルノブイリ)」のような致命的なものでなく、Badtranseのように、カゼに似た---「知人にウイルスをバラ撒いて気まずい思いをする」---といった軽い症状を引き起こすものが蔓延するだろう。 
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と答えています。

でも、そもそも、なぜ、自然界では、

現実の病気のウイルスとよく似ている。致死率が高いウイルスはあまり流行しない。流行するのは、カゼのウイルスのような致命的ではないもの。

なのでしょうか。これを第一の疑問とします。

第二の疑問点として、例えば、AIDSウイルスにしても、エボラ出血熱(先月辺りからアフリカのガボンやコンゴで発生しているようで今後の成り行きが心配です)にしても、森に潜んでいたネズミやサルといった宿主動物に、人間が出くわす(開発により森林を切り開く、などといった自然破壊の問題がつながっています)ことで、あらたな感染症の脅威に遭遇するわけです。でも、考えてみると、なぜ、ネズミやサルは自分の体の中にウイルスを飼っているのにAIDSやエボラ出血熱の症状が出ないのでしょうか。

実は、第一の疑問も、第二の疑問も、同じところに答えがあります。
思考実験してみましょう。

突然変異により「猛毒のウイルス」と「弱毒のウイルス」のふたつのタイプに分かれた、とします。猛毒ウイルスは、その猛毒性ゆえに、感染者のほとんどを死に至らします。ということは、子孫は感染者が死亡してしまった時点で増やせなくなります。一方、弱毒のウイルスは、感染者をすぐに殺してしまうわけではありません。その結果、子孫を多く残せるわけです。
こんな思考実験してみると、「猛毒のウイルス」よりも「弱毒のウイルス」の方が繁栄することがわかります。

注)ウイルス...子孫  ウイルスは繁殖しないので厳密には「子孫」ではありません。「自分の複製」というのが正確な言い方です)

これを、冒頭の問いに当てはめてみるとわかりますね。
「チェルノブイリのような致命的なものは、感染した時点でパソコンが死んでしまうのでそれ以上は増殖しない、Badtrans.Bのようにカゼに似た軽い症状を引き起こすウイルスはパソコン自体を殺すことはなく、しかも、ユーザが通常使用している分には感染していることに気づかないような軽い症状であればあるほど、感染の発覚が遅れるため、蔓延する」ということです。

もう一歩考えてみると、感染者・感染動物側に「ウイルス耐性の強い個体」と「ウイルス耐性の弱い個体」が存在するとしましょう。「猛毒のウイルス」と「弱毒のウイルス」との組み合わせを考えると、合計4通りの組み合わせが考えられます。それらのうち、最も有利なのは、「ウイルス耐性の強い個体(ヒトや動物)」と「弱毒のウイルス」の組み合わせです。こうしてみると、個体は、よりウイルス耐性の強い個体ほど生き残り、ウイルス側は、弱毒のウイルスほど生き残る、ということが判ります。こうした長い期間の自然淘汰の後に、ウイルスを体内にもっても発病しない宿主動物(ネズミやらサルやら)、という奇妙な共存関係が産まれるのです。ここが、第一の疑問、第二の疑問の答えです。

なお、「ウイルス耐性の強い個体」と「ウイルス耐性の弱い個体」という仮定をしましたが、ほんとうにそんなことがあるのでしょうか。実は、現代の欧米人がその実例なのです。
今の欧米人は、中性のペストの大流行を生き残って来た子孫なのですから、考えてみるとおわかりだと思いますが、さらに、ペストへの耐性は「血液型がB型のヒト」ほど強いことがわかってきました。欧米人にはB型が多いことが、この証拠とされています(とんでもサイエンス風の話しと思われるかもしれませんが、ほんとの話しです(笑))。

注)ペスト ペストはウイルスではなく「菌」ですが

それにしても、コンピュータウイルスって、自然界にいるほんもののウイルスとほんとに挙動が似てますね。コンピュータウイルスとは、うまいネーミングだと改めて感心してしまいます。


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